未来会計~森山一行 公認会計士事務所

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2019.11.27

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近い未来に目を凝らす 資金の観点~中小企業の管理会計02

当事務所のテーマ、というか当事務所の売り物は、「未来会計」と銘打っております。
会計で集めた過去の数字を未来へ生かす、という話です。今回はその2回目です。
前回のご提案として、まずは、近い未来、例えば3,4カ月後を考えましょう、という話をしました。
具体的には、直近数カ月の試算表から損益項目を引っ張り出して、並べて、眺めるていただく。
そのうえで近い将来を、最初はあてずっぽうでもよいから、予測してみましょう、という話でした。
今回は、そうやって得られた予測に基づいて、近未来の資金の動きを予測しようという話です。

目次

3,4カ月先の資金の動きを数字で組み立てる。その効能。

本稿でご紹介する数字のチェックを定期的に(できれば毎月)することで、このような効能が期待できます。

・効能1 会計処理を経た、それなり以上の精度を持つ数字に基づく現状把握が可能となる。
・効能2 その精度に基づく、近未来(3~4カ月先)の予測が可能となる。
・効能3 会計数値の理解が深まる。
・効能4 これが一番大事だが、投資意思決定の材料が通帳残高しかない行き当たりばったり経営から卒業できる。

まずはやってみよう~損益予測(前回の復習)

実績に基づき予測を並べる

まずは前回のおさらいです。
画像の黒字は、直近実績値です。試算表から数字を拾って並べてください。
その趨勢を踏まえて近未来の予測値を並べたのが画像の赤字です。
こんなあてずっぽうに意味があるのか、と思うかもしれません。
しかし、予測値の精度を上げようと思いながら実績値を眺めることで、初めで各項目の動きに対する感度が高まります。
また、各項目の中身の理解が深まります。会計処理のミスを鋭く見つけることができます。
そうすれば、会計処理の精度が高まり、将来予測の精度もさらに高まる、という好循環が生まれます。

まずはやってみよう~資金予測

さて、今回のお題は資金の予測です。画像のような資金予定表を作ってみるのです。
正しく会計処理が行われているなら、損益の動きのあとを追いかけるように資金は動きます。
例えばこの例の場合、売上の入金は、当月末締めの翌月末入金なのです。
一方、仕入の支払は、当月末締めの翌々月15日払いなのです。
すると例えば4月の売上入金は3月計上の売上高16,000となり、4月の仕入支払は2月計上の仕入高11,000となるはずです。
そのような発想で①と②の数字を並べました。
経費については、費用の計上と支払が同じ月なので、月のずれなく③のように並べました。
こうして月ごとの入金と支払が並ぶと、その月の増減額④が自ずと決まります。
その増減額を月初の資金残高⑤に対して加減算すれば、月末残高⑥も決まります。

作業は以上、あとは予測値を眺め、指針とする

作業は以上、それだけであります。それでも慣れないうちは手間がかかると思います。
さて、改めて予測値を眺めます。今、予測を行っているのは4月の中旬くらいであるとイメージしながら眺めてください。
(画面を上下するのが大変なので、前項と同じ画像をこの項にも再掲してます。)
そもそも損益の予測をした時点で、近々資金がピンチになることは見えてました(3か月連続赤字)。うわーこわいよー、という感じです。
しかし、この予測値を眺める限り、5月月末がかなりギリギリですが、何とか切り抜けられそうです。すこし、ほっとする感じです。
この感触は、3月末時点の通帳を眺めるだけでは出てきません。損益予測を眺めるだけでも出てきません。
ここで示した資金予定表を作ってみて初めて出てくる感触です。

資金予定表の使用上の注意1

5月何とかセーフ、6月もOKという感触は、この資金予定表の前提である損益の予測が外れると、もろくも崩れ去ります。
なので、そもそもの利益予測については堅めに、すなわち「売上は少なめに・仕入や経費は多めに」見ておくことをお勧めします。
また、当初は予測していなかった新しい事態が発生したら、手直しを随時して、資金ショートを起こさないか確かめてください。
新しい事態が、損益予測のどの項目に、どれだけの金額の影響を与えるか、損益の予測を続けているうちにわかってくるはずです。
(それが会計数値の理解が深まる、ということでしょう。)
損益予測が変更されれば、資金予定表も連動して変更されます。

資金予定表の使用上の注意2

前回の損益予測と今回の資金予定表をワンセットで、毎月更新しながら、近い将来の監視を行うことをお勧めします。
もしも貴社が金融機関から借入をしておられるなら(大半の会社が当たることでしょう)、「支払合計」の下に「借入返済」の欄を一行加えてください。
いずれお話しするかもしれませんが、会計のリクツの中では、月次損益の中には借入の返済支出は出てこないのです。
そのため、損益予測の表ではなく、資金予定表に借入返済支出を反映する必要があります。

損益予測と資金予定表、今回のシンプルなものの作成に、まずは取り組んでみてください。
未来を見ようとするだけで、過去の集積である会計の、見え方が変わってきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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